私と娘は、日本人の高級官僚やスター、世界的実業家などの名前を挙げて、「あの人たちもダニエリを利用するのかしら……」と語り合いました。
私たちが最初に泊まった日には、日本人の宿泊客とは出会わなかったので、私たちだけだと思っていたのですが、二泊目の朝、すぐ近くのテーブルに日本人の家族がいました。親子の三人連れです。
ウエイターに用事を頼む若い女性のイタリア語は流暢です。私の想像癖で、娘が留学か仕事でイタリアに住んでいて、日本の両親を高級ホテルに招待したのではないかと考えました。
この場に夫がいたら、どんな雰囲気になるか想像してみました。夫のポールは生粋のアメリカ人です。映画監督の仕事をしていて、絶賛している映画は仲代達也主演の『大菩薩峠』です。
特別なとき以外、服装にはこだわりません。性格も思想もリベラルな人なので、貴族趣味や権威主義は肌に合わないのです。
「パパがここにいたら、どんな顔をすると思う?」
私の問いに娘は、「一時間が限度かな?」と言って小さく肩をすくめました。
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