娘は大喜びでゴージャスな気分を満喫していました。朝からシャンパンが付いたディナー風の食事が出たのには驚かされました。

レストランに入るのに、いつもドレスアップが求められるのは、少し煩わしい感じがしますが、何しろ女性の大部分がハイヒールを履いているのです。私はコンフォートシューズでないと長く歩けないので、とてもみすぼらしく見えたに違いありません。ただ娘はとても背が高いので、低い靴を履いていても他の女性たちを圧倒しています。

ここでは娘の存在が、付き添うようにちょこちょこ歩いているみじめな私を救ってくれた感じです。寄らば大樹の陰、というところ。

その日の朝食で隣の席に座った家族の装いを見て、「やっぱり」と感心した次第。

十歳くらいの子供二人を連れた夫婦の席です。女の子は見るからに高級なフリル付きの洋服を着ていて、身だしなみは完璧です。男の子は、黒のジャケットをきちんと着こなした豆紳士。父親はこの席に入る男性にしては、多少カジュアルな服装ですが、多分、朝食なので部屋からそのまま出てきたのでしょう。

しかし、彼の足元を見ると、高級なスエードの靴を素足に履いています。明るいカーキ色の靴はなめらかで、一目見ただけで上質であることが分かります。

ジャケットもベージュで軽い出で立ちですが、アメリカではどんな高級ホテルでもお目にかかることのない家族連れです。

私のほうに背中を向けている母親の顔は見えませんでしたが、ロングヘアーの金髪はよく手入れされていて、ゆったりと着こなしたピンクの洋服の上に波打っています。

ヨーロッパの上流階級を絵に描いたような家族です。

その家族だけではありません。発散する雰囲気は各テーブルそれぞれですが、どの人たちも、独特の気品を身に付けています。

なるほどダニエリの客……、と妙な納得をさせられます。サービスする側のウエイターも、タキシードに蝶ネクタイ姿。慇懃でありながら、やわらかでそつのない雰囲気を全身に漂わせています。