小児神経3 全ての人が大切にされる社会とは

医学部2年生の時、学生生協の本屋で一冊の本が目に留まった。『僕アホやない人間だ』そのタイトルが気になって手に取った。

著者は福井達雨(たつう)さん。福井さんは1962年に止揚学園という知的障害者施設を滋賀県の能登川に設立した。以来、社会から障害者差別をなくすことと、障害児が地域の子どもたちと一緒に学校へ通えることを願って、独自の社会活動を展開した。

『生命をかつぐって重いなあ』、『僕たち太陽があたらへん』など、福井さんの著書を読み続けるうちに、この人に会ってみたいと思うようになった。

医学部4年生の時、大学祭で福井さんの講演会を企画した。大学祭で真面目な講演会を開催しても、参加者は数十人程度だと先輩に忠告された。しかし、1週間講義をサボって宣伝に奔走したかいもあって、当日は130人が参加してくれた。福井さんの講演は私が予想した以上に熱く、激しく、刺激的だった。一方で愛と優しさに満ちていた。

後日、その時の講演録音を仲間と手分けして文章にした。手書きの原稿をわら半紙に印刷し、ホチキスで閉じた。60ページほどの粗末な冊子だが、学生時代の宝物として大切に保管している。30年経った今でも読み返すことのある福井さんの言葉に、私は強い影響を受け続けている。

 

👉『小児神経科医の軌跡』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】40代半ば、自分が女であることを忘れて10年以上。デートや恋がしたくて、ネットで出会い系や交際クラブを探してみることにした

【注目記事】マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…