「えっ、そうですか?」
「ポール・ゴーギャンやアナトール・フランスが滞在していたのですよ」
早速ドアのところに行く。なんとホテル入り口に書いてある。立派なレプリカである。今まで気が付かなかったのだからおかしい。ディレクターは笑って言った。
「マダム河野は入り口からさっと入ってくるから」
そうなのである。空港からバスに乗り、モンパルナスに着くと大またで通りを歩き、そのままの勢いでフロントに来てしまうのである。
顔なじみの誰かがフロントにいるし、事務室のディレクターも出てきて「ボンジュール」。
フロントに突進してしまっていて入り口のレプリカなどには目もくれなかったのである。
ホテル朝食のクロワッサン
モンパルナスの定宿にしているホテルの食堂は小奇麗で可愛らしい。
ジュース、カフェオレ、チーズ、ヨーグルトにゆで卵などが小さなキャビネットの上にたくさん置かれている。いつもどおりいろいろな品をテーブルに運ぶ。
パンを取ろうとケースの扉を開けてちょっとがっくりする。
いつものクロワッサンではなくて少し小ぶりで張りもない感じである。
プチパンとクロワッサンを皿に入れ食べ始める。おいしくない。フランスに来た実感は朝食のクロワッサンとカフェオレから始まる。それがこの味ではがっくりである。
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