イザベラは心から、この従弟たちは命と同じくらい大切な、かけがえの無い宝だと思った。その夜、イザベラは上機嫌で母にそのことを話した。母は黙って奥深い目つきで聞いていたが、やがて静かに言った。

「あのね、イザベラ、アルフォンソから大変なことを聞いたの。あの4人が明日、マントヴァの秋祭りで見回りをするんですって。お祭りの会場を4つに分けてそれぞれ分担を決めてね。フランチェスコ様が現れないか、見張るつもりらしいの。決して貴女に会わせない、と言っているんですって」

イザベラはうなだれて自分の部屋へ行った。窓から星空を見上げながら、イザベラは物思いに沈んだ。今にして思えば、従兄たちが今日、一番良い服を着てやって来たのは、彼らの切なる訴えだった様な気がした。それを思うと、イザベラは涙がにじんできた。とても明日マントヴァに行くことは許されない様な気がした。

「イザベラ、早く起きて」

翌朝、まだ暗いうちにイザベラは母に揺り起こされた。「ベアトリーチェが熱を出したの。それで、私は今日ついて行けないから、チェチーリアたちと一緒に行ってちょうだい」

チェチーリアは、イザベラより1歳上の従姉である。

「お母様、今日はやめようかと思っているんです」

イザベラはうつむいて言った。

「何を言っているの。さあ、早く起きて。マントヴァは遠いのよ。チェチーリアたちはもうすぐ出るんですって」

母にせかされてイザベラは起きた。

「ねえ、見て。毎年秋祭りは寒くなるから、今年は貴女にいいものを用意したの」

「お母様、また何か作ったの? いやだわ、こんなの派手過ぎるわ」

侍女の差し出した箱の中には、真紅のマントが入っていた。

「そんなことないわよ。ちょっと着てみて。ほら、よく似合うじゃない」

母は目を細めてイザベラの姿を見た。

知らないうちに母がチェチーリアに頼んでしまったので断ることも出来ず、イザベラは大急ぎで支度をした。出かける前にイザベラは、ベアトリーチェの寝室に行った。

「どう? 苦しい?」

「ううん、だいぶ良くなったの」

「ごめんね、私も今日はやめようかと思ったんだけれど」

「いいのよ。もしもマダレーナおねえ様に会ったら、よろしくお伝えしてね」

「わかったわ」

「そのマント、素敵よ。お姉様によく似合うわ」

病気なのに、こんな思いやりのある言葉を言ってくれるベアトリーチェの優しさに、イザベラは思わず涙ぐんだ。

 

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