その日の夜、部屋に戻ると千晶から電話があった。

「まだ病院なの? どうしたの?」

「麻利衣、お母さんの具合はどう?」

「元気そうよ。夕食は外で焼肉食べてたし」

「そう。よかった」

「どうしてわざわざ電話を?」

「いや、それがね、病院で院内緊急コールがあったでしょ。行ってみたら、あの患者さんだったのよ。ほら、肺癌が其田治療院で完治したっていう患者さん」

「えっ、だって癌は完治していたんでしょ。何で入院なんか」

「確かに癌は消えていたんだけど、昨日、空咳と息切れがするということで再診したみたい。其田の方にも相談したみたいなんだけど、完全予約制だと言われて1か月先じゃないとみてくれなかったらしい。

それでCT検査をしたら、急性間質性肺炎と診断されて即入院。酸素吸入をして、ステロイドパルスを開始したみたいなんだけど、夜中には低酸素血症がひどくなって、気管挿管して人工呼吸器に繋がれた。

それでも追いつかずに心停止になって院内緊急コールがかけられたの。心肺蘇生を頑張ったけどだめだった。

その時、他科を回っている研修医たちと話をしたんだけど、実はこの病院だけでもあと一例、其田に治療された後、間質性肺炎で亡くなった人がいたらしい。他の病院でも同様のケースが頻発しているって話なの。それで心配になって電話をかけたのよ」

「そんな……一体どうしたらいいの」

「どういうことか分からないけど、その其田って男、何か隠しているに違いないわよ。化けの皮を剥いでやらないと、これからも同じような被害者が増えるに違いないわ。ねえ、麻利衣、今から賽子さんに相談に行きましょうよ」

「えっ、今から? もう8時だよ」

「何が起きているか早く知らないと、対処のしようがない。急いだ方がいいと思う」

「分かった」

麻利衣は身支度を整えた。

「あら、またどっか行くの?」

小百合が声をかけた。

「うん、ちょっと、仕事のことで賽子さんの事務所に」

「そう。人使いが荒いのね。気をつけてよ」

「うん。じゃ」

麻利衣は駅に急いだ。

次回更新は3月7日(土)、21時の予定です。

 

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