【前回の記事を読む】いつも注意をしてくる委員長に「うっさいなぁ」とマコトは煙たそうな態度をとるが、2人はデキている。もうアレも済んでいるだろう…

第2章

壁掛け時計が14時15分を過ぎた頃、立て付けの悪い教室の引き戸がガラガラと開いた。入ってきたのは、担任の田中先生だ。「おーい、やるぞぉ」と言いながら、先生が教壇に上がって前を向く。学級委員長の美樹が「起立、礼、着席」と凛とした声で号令をかけた。

昔はイケメン教員だったろう彫りの深い顔。今では五〇歳代となり、頭の毛が少し薄くなってきた田中先生。

大阪南部の泉州地域に生まれ育った彼は、なかなかの癖ある関西弁を使うネイティブ関西人だ。彼が生徒に向けて泉州系関西弁で話しかける。

「えー、今からホームルームを始めます。で、今日やねんけど、今年の文化祭の出し物、ええかげん、今日、決めようちゅうてな。準備も必要やさかいな、早く決めんと。先生もバンバン意見出して協力するから。みんなあんじょうやりやぁ」

一番前の席のマコトがクラスの三六人に向かって「真面目に議論しよや!」と呼びかける。咄嗟に先生が「マコト! お前が一番真面目にせんかい!」と指導。クラス中が笑いに包まれる。笑顔の先生が目線を移して笑う僕らを指差す。

「おい! 駿、小林、タケ! 笑てるけど、お前らもやからな。ほんま、今日は、ちょけんと、ちゃんとせえよ! いつもみたいにフザけてたら承知せんからな!」と言った先生に、間髪いれず僕が「先生。それ、ちょけろってフリですか?」と問うと、クラスの皆が吹き出した。

「ちゃうわ! ほんまに、駿はアホなことばっかり言うてからに!」とクラスが良い雰囲気になったところで、先生がゴホンと咳払い。「ほな委員長」と美樹に前へ出て仕切るように要請した。それを受けた美樹は背筋をピンと伸ばして、まるでランウェイを歩くファッションモデルのように教室の前方へ。教壇の前、田中先生の隣に到着した美樹は踵をめぐらし、くるりと反転。クラスメイト全員の顔を見渡して口を開いた。