朴訥先輩に切り絵を渡す。長い足を組んで、手に取って眺めている。
「ふうん、僕がいじっちゃっていいんだね」
「お願いします」
頭を下げてお願いする。先輩は「うん、こんな感じかぁ」とか言いながらまだ見ている。
宿直の神田さんに朝顔の種を渡す。神田さんは喜んでくれた。
「拓也さんは気が早いな。四月にもならないのに。どこに植えるかなあ」
神田さんが大きく伸びをしながら、笑顔を見せた。お礼を言って、またグループホームへ戻る。小走り、駆け足、ドキドキするけどどうしてだろう。風がまだ冷たいけどいいや、ジャンパーなんて。走ればいい。
切り絵は先輩がもっとかっこよくしてくれる。先輩と拓也さんの出会い、化学反応みたいなものみたい。ねえ、どうなるの。
拓也さん、種、蒔くよ。神田さんが嬉しいって、蒔いてくれるって。
そしたら小学校で教わった通りに芽が出て、双葉になるよね、それからどうなるんだっけ。観察、一緒にしよう。つるが伸びるんだよね。
絡まるから神田さんと私でまっすぐに棒を立てるよ。拓也さんも来てよ。ほかの利用者さんも呼ぶよ。
水をやる人も出てくるよ。利用者さんかな、職員かな、みんなかな。そしてさ、青い花が咲くよ。一緒に見たいよ、見ようよ。
ねえ、種ってさ、種って愛じゃないのかな。
愛が種かな。恋愛、慈愛、友愛、博愛、色んな愛があるけどさ、これなんかの愛だよ。
あなたのなのか、私のなのか、みんなから少しずついっぱいもらったものなのかは分からないけど、愛。
そうだよね、きっと。
愛してる。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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