昼休みをとって、あと夕方まで残りわずか。

「弁当食べたか、俺は足りなかったぜ」

とも言われたが、仕方ない。

「ごめんなさい、気をつけます」

と謝るしかない。

夕方が来て帰る時間になった。

拓也さんが来て「相談があるんだ、いいか」と言うので、いいですよ、と応じた。

拓也さんの部屋に丸椅子を持って、部屋の扉は開けさせてもらった。拓也さんはベッドに座っている。男の人の匂いが立ち込める。

「あのな、あなたにおっぱい見せてって言ったよな。それ、若い職員のあの子じゃだめなんだ」

分かるか、と小さな声で拓也さんが尋ねる。

え、なんでと口から出かかるが声にならない。

「俺な、硬派だったってあなたに言ったよな。そうなんだよ。女、知ったの遅えの。やり方とかよく分かんなかったってのもあるけど、やっぱさ、気持ちが動かないと興奮しねえのよ」

相槌をうつことすら、私はできないでいた。

「あなた、私がババアだからみんな好きなこと言ってっていうけど、そうじゃねえの。前にあなた聞いたことあったよな、俺が外車乗り回してよ、ほんとに素敵な女の人抱いたんでしょうたくさんって。そうだよ」

確かにそう言ったことがあった。コカ・コーラの瓶みたいな女の人がよく似合いそうだったからそう尋ねた覚えがある。

「俺、あなた見ると反応すんの、大事なとこが。それほかの人じゃだめなんだ。あなた綺麗だよ」

「そんなこと初めて言われました」

だって、言われたことない。綺麗だなんて言われたことない。

「だからおっぱい見てえのよ。あなたの裸が見たい、分かるか」

「分かる、けど」

次回更新は3月16日(月)、20時の予定です。

 

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