【前回記事を読む】“スタッフと利用者”のはずが「あの2人なんかちょっと怪しいですよねえ」…「キスして」と気持ちをぶつけられ、どうすれば…
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私が悪いのかもしれない。
拓也さんには誰にも相談する人がいなくて、心が鬱屈してしまうこともあった。そんな時にたまたま、いい感じに年の開いた女性職員が話を聞いたようだ。少し救われた気持ちになったが、数年のマグマのような鬱憤はなかなか収まっていない。自分の気持ちを紐解くことは自分自身では難しい。
職場であれば、学校であれば、指導者にあたる人がその人を「今ここで悩んでるのか」と俯瞰して導くことが出来る。
けれど、人生はそういうものではない。
以前、知り合いの女性が壮絶な暴力に悩んでいたことがあると話してくれた。
夫に殴られ、蹴られる日々が続いて命からがら逃げ出したと。
「でもね、世間ってこんなもんかって思った。アパートの窓全開にしてね、私、痛い、助けてえって大声で叫んだんだよ。何度も何度も。住宅街なんだよ。一階なの。誰も助けに来てくれないの」
不幸中の幸いというべきか、彼女には子供がいなかったので、貯金をありたっけ引き出して一人で逃げ出すことができた。子供がいたらなかなか難しかったかもね、と彼女は言っていた。
どうしてお父さんと子供を離すの。あなた、親でしょう。子供のためになんとか頑張りなさい。ほら、夫婦でカウンセリングとか受けてみたら。
「私の両親は考えが古いから。実家に帰って少し守ってもらいたかったけど。きっと子供がいたらそんな風に言われたと思うの」
彼女の話を聞いて、私はそっか、と呟いた。