第4章 戦いの始まり
1 不良と洋子
戦いは思いもしない身近なところから、始まった。
七月中旬(ちゅうじゅん)、記録的な暑さが続いていた。
エアコンは保健室とコンピュータ室にあるだけだった。教室の中は、うだるような蒸し暑さだった。
昼前から校舎全体がむっとする暗いエネルギーに包まれていた。
そのエネルギーに引き寄せられるように、邪悪(じゃあく)なエネルギーを持った者が近づいてくるのを、波奈(はな)は感じた。
波奈は文子(ふみこ)、悟(さとる)、研一(けんいち)に心で知らせた。三人はすぐに心で応えた。
青山(あおやま)先生を信じることで、短期間のうちにもう、そんなことができるようになっていた。邪悪(じゃあく)なエネルギーを持った者の数は一人ではない。あちらこちらから集まってくる。
昼休みになった。校舎から子どもたちが、校庭にはき出されてきた。ドッジボールやバレーボールなども始まった。
波奈は教室の窓から校庭を見おろした。研一と悟はいつものように、二人で校庭のすみのクスノキの下で静かに話をしていた。
文子は教室内にいる。ふりむかなくてもよくわかる。机の上で本を開いて、静かに読書中だ。
いつもと変わりない光景である。しかし、校門付近から、悪意に満ちたエネルギーが、校庭のある一点にそそがれていた。
波奈はそちらを見た。バレーボールのグループの中に背の高い少女がいた。波奈はその少女を知っていた。桜井洋子(さくらいようこ)。この四月に、市内の他校から転入してきて、となりの六年二組に入った。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。