無精ひげの男性はハンチング帽をかぶりながら身を乗り出す。
「アンタ、専門は?」
「舞台の脚本を少々……」
「戯曲作家っすよ! すごいじゃないっすか!」
長髪の青年が目をキラキラと輝かせて僕を見つめた。
「こちらは小説家の広瀬先生と、ひょろっちいのが佐久間くん」
「言いぐさ酷すぎないっすか?」
すかさず突っ込む佐久間くんへ広瀬さんが声をかぶせた。
「こいつはガキんちょってだけ覚えときゃいい」
「叔父貴、オレもうガキって歳じゃないんすけど」
「お前はまだ四分の一人前だ。扱いなんざガキんちょで十分だ」佐久間さんがすねたようにそっぽを向く。
「へいへい、オレはまだ作品も作ったこともない小説家気取りですよぉだ」
完全にいじけてしまった佐久間くんは部屋の中に戻っていった。
「見てのとおりの偏屈な集まりだが、よろしくな。えぇっとぉ」
「一宮さん」
「わーってる……よろしくな、イシニヤ!」
広瀬さんがあまりに堂々と名前を間違えるものだから、僕と藍原さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
日没が近かったこともあり、持っていた荷物を案内された部屋に置いて居間に戻ると、そこには台所で食器を洗っている二人の姿があった。
「僕らの仕事は御用聞き、いわゆる何でも屋です」
「え? 先生は小説家じゃ」
「子供の小遣いせびりみたいですが、何かを作るにも元手が必要ですからね。世知辛い話ですが、空いた時間で自分たちのものを作っているって形です」