【前回の記事を読む】高校時代と変わらない、歯を見せながら笑う姿に思わず顔を近づけ、「これで、勘弁してください」とキスした場所は…

第二幕 ほしいもの

「来るって……この雨の中?」

五分ほど経ったころだろうか、向こうの三叉路に車のライトが見えたかと思うと、一台の四駆が目の前に停まる。中には、大田さんが乗っていた。

「乗りな」

「つくづく……敵わないですね、大田さん」

僕は言われるがままに乗り込む。車内は芳香剤の香りがした。

大田さんはゆっくりとアクセルを踏み、車は豪雨の道を走り出した。

「あの……どこに向かってるんですか?」

「坊主。お前さん、金に困ってんだろ」 僕は、その問いに答えられなかった。

「ここに来るまでに、少しお前さんの身辺を調べた。今は貯金もなくなって、家賃も払えねぇってとこか」

「調べたって……どうやって」

「あそこの大家、俺の知り合いなんだ。間違っちゃないだろ?」僕は小さくうなずく。大田さんの言葉は続く。

「お前に仕事をやろうと思ってな」

「……あらかたの職種は手を付けましたけど、どれもダメでしたよ?」

「いや、坊主に最適な仕事だ」

大田さんはそう言って、僕に一通の封筒を渡す。その中には、求人募集の切り抜きが入っていた。

「知り合いがこれ持って来たんだ。アンタのところにいい奴いないかってな」

僕は大田さんに推薦されたことが嬉しくて、自然と笑顔になっていた。

「詳しいことは向こうの連中が説明する。とりあえず、着くまで寝とけ」 

僕は疲れていたのもあり、そのまま助手席で目を閉じた。