【前回の記事を読む】婚約者との出会いは中学校だった。入学初日から「下の名前までかわいい」と噂された彼女は、さらに苗字までかわいくて…
第二章「雫との出会い」
「今日はクラス委員を決めたいと思います。みんなには積極的に参加してほしいので、ぜひ立候補をしてください」
委員長、副委員長、書記は小学校のときもあったけど、中学校では各クラスで風紀委員、保健委員、図書委員、美化委員、広報委員、体育祭委員、文化祭委員を決めて、毎月全学年の代表が集まって委員会を行うらしい。三十人ほどのクラスで十人が何かしらの役割を与えられるようだ。
「こういうのは面倒なのを押し付けられる前に立候補したもん勝ちだな」
六年生のとき、話し合いでは決まらずじゃんけんに負けた隼人が委員長になって、行事があるたびに招集されては大変な思いをしていたのを思い出し、大きくうなずく。
「先生、俺は副委員長に立候補します」
『え?』
僕と悠人、そして拓也の三人、声がそろう。
「面倒なのはやりたくないんじゃないのかよ」
悠人はあっけにとられた表情で隼人の顔を覗き込む。拓也も同じ顔をしている。
「いいんだよ、副だから。……てことで透、委員長よろしく」
「ま、待て」
不意打ちな言葉に驚き、ガタっと大きな音を鳴らして席を立つと、クラス中の視線を感じる。
「いいじゃん」
「賛成、賛成」
げらげら大声で笑っている悠人と拓也の賛同に合わせて、拍手が沸き起こる。余計なことを……なんて恨み言もいう間も与えられないうちに断れない雰囲気になってしまった。
「黒田くん、お願いできるかな?」
僕の意思をうかがっているようだが、先生のまなざしには期待が込められている気がする。
特にやりたい委員があったわけでもないので、とっさに断る理由が全く思いつかない。
それにここで断るのもなんだか男らしくない。
「……やります」
しぶしぶ諦めたように返事をすると、再び大きな拍手に包まれる。決まってしまったからには仕方がない。それなら先ほど賛成を促した悠人と拓也の二人にも大変そうな役割を与えてしまえ。もうやけくそだ。