「じゃあ悠人は体育祭委員、拓也は文化祭委員な。賛成の人は拍手」

「ええっ?」

「ちょっ……」 

まるで待ち構えていたかのように即座に拍手の嵐が巻き起こる。同じクラスになってまだ一週間だというのに、こんなにクラスの一体感を生み出せたことに不思議な気分だが、委員長を押し付けられたときの不満は清々しいくらいに吹き飛んでしまった。

うすうす気づいてはいたが、存外僕は雰囲気に流されやすい単純な性格みたいだ。いつもクラスでは目立つ中心メンバーにはいたけど、自分が委員長のように率先してみんなを引っ張るような大役を任されたことはなかったので、初めての経験に胸が高鳴っていた。

「体育祭も文化祭も一大イベントだからきっとやりがいがあるわよ。委員長の黒田くんと副委員長の佐竹くんと一緒に進めることも多いから、仲よし四人組だと心強いね」

母親のように優しいまなざしで一連の流れを見守っていた先生は二人がやってくれることを確信しているようで、もう確認の言葉はない。

「じゃあ黒田くん、佐竹くん、前に出てもらってさっそくほかの委員を決めてもらおうかな」

ギーッと椅子を引いて机の隙間の細い通路をぬって、教室の一番前の教卓に二人で並ぶ。授業中に当てられて黒板の前に立つことはあっても、こうやって大勢と対面するとやっぱり緊張で手足が少し震えてしまう。

背中を向けて立つのとこうしてみんなの視線を浴びるのとではこうも景色が違うのか。対して照れながらもへらへらと頭をかく余裕がある隼人は肝が据わっていると感心してしまう。

「えーと……」

「書記だよ書記。決まったの書いてもらおう」

「そうだな」

さすがというべきか、こんなお調子者でも委員長経験者が隣にいると心強い。透頑張れなんて冷やかしなのか応援なのかあいまいな声援が聞こえたところで改めて向き直る。

「じゃあ、書記をやってくれる人は立候補をお願いします」

「…………」

左右を見渡すがなかなかみんな目を合わせてくれない。先ほどまであれだけ盛り上がりを見せていた教室がしんと静まり返る。僕は相当困った顔をしていたのだろうか、その沈黙を破ったのは意外にも雪野さんだった。

いつも教室の隅っこの方で宿題や小説なんかの真面目な話をしていてあまり目立たない彼女が手を挙げるのにはすごく勇気が必要だったことは容易に想像がつく。

「私……でもいいですか?」

おずおずと顔の横に小さく手を挙げる彼女を見つけて口元が緩む。もちろん、と僕が言う前に隼人が目を輝かせてお礼の言葉を伝えて、拍手を促していた。

次回更新は3月3日(火)、20時の予定です。

 

👉『スノードロップー雪の雫の日記ー』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】病院から返ってきた彼は別人だった。物足りないと感じていた彼との行為は長く激しくなり、私は初めて絶頂で意識を失って…

【注目記事】「どの部屋にする?」選んだのは、大きなベッドに小さな冷蔵庫、広すぎるバスルーム。浴槽の前で促されて服を脱ぐと…