「それは、あなたの魂にとって、ここが特別な場所だからです。私と同じですよ」

その言葉は、腑に落ちた。

「パパ、ママとけっこんして」

N雄の言葉に驚いた。

結婚! 死んでいるのに……。

「パパとママがけっこんして、みんなでたのしくくらそうよ」

N雄が、俺の顔を見る。

「死んだ者同士が結婚するなんて、ありえないことだ。N雄は、やはり子どもだな」

その言葉は、途中で、M子に遮られた。

「いえ。あるのです。そんなに多くはありませんが、魂と魂が結婚することがあります」

信じられないことであった。

「私、あなたと結婚したい。生きていた時からの、長い夢を叶えたいのです」

「そりゃ、俺も……。認知症で忘れていたけれど、思い出してからは、出来ることなら、初恋のM子ちゃんと一緒になりたいと思ってる」

「ありがとう。嬉しいわ」

「でも、そんなこと、本当に出来るの」

「出来ます。前世で叶えられなかった願いが叶えられます。魂と魂が合意すれば」

「わかった。俺もM子ちゃんと結ばれたい」

「浄土に居る、父と母も、賛成してくれています。Fさんとの仲を、従兄妹同士ではおかしな子が生まれるかもしれないことを理由に無理やり引き離し、私に不幸な結婚を強いた。

そのことを後悔しています。今度こそ幸せな結婚をさせてやりたいと言ってくれています」

「叔父さん、叔母さんが、そう言ってくれているのか。嬉しいな」

「ええ。後は、あなたのお父さんとお母さんね。どうおっしゃるか、心配だわ」

「俺の頼みなら、反対はしないと思う」

「浄土へ行ったら、お願いしましょう」

「妻も、同意してくれているしな」

「ええ。有難いことです」

「それで決まりだな。結婚するには、これからどうしたらよいのだ?」

「浄土へ行きます。長くとどまっていた、この地・このベンチともさようならです」