「やったな、ペロピダス!」

同志たちが手を打って喜んだが、

「まだヒュパテスがいる。やつの屋敷に急ごう」

ペロピダスは緊迫した面持ちを崩さず、足早に、次なる敵ヒュパテスの館を目ざす。異変を察知したヒュパテスは泡を食って自宅から逃げ出し、隣の家に逃げ込んだが、ペロピダスは間髪いれずに追いすがり、隣家からヒュパテスを引きずり出すと斬殺した。

互いに使命を果たしたペロピダス隊とカロン隊は落ちあうと、

「トリアにいるフェレニコスたちに首尾を伝え、援軍を乞おう」

まずはトリアに急使を派遣し、加勢をたのむ。アテネの北方にあるトリアには、フェレニコスの指揮する後発部隊が待機している。友軍も朝にはテーバイに到着するはずだ。

「応戦準備にかかれ! 急げ!」

同志たちは、投獄されている仲間を獄中から解放し、神殿に飾ってある武器を取り、武器屋に駆け込んで店先から武器を調達してきては、急ごしらえで武装を固め、スパルタの駐屯軍の反撃に備える。市民たちに説いて、蜂起を促すことも忘れなかった。

「テーバイの人々よ! 起きてくれ! 自由を勝ち取るために、いまこそ決起せよ!」

ペロピダスら同志の面々は、大音声(だいおんじょう)で同胞たちに呼びかけた。

「なんだ? なんだ?」

テーバイの人々は、寡頭派のリーダーたちが殺されたと聞き、混乱した。

「レオンティアデスとアルキアスが殺されたらしいぞ」

「ほんとうか?」

「ペロピダスたちがアテネから帰還し、カロンやメロンと共謀して、寡頭派の巨頭たちを襲撃したそうだ」

「なんと!」「三年前、スパルタ軍が踏み込んできたときも、こんなふうに唐突だったな」

「スパルタ人の奇襲に対し、民主派の同志たちも奇襲で応酬したのさ」

「これで、やっと自由になれるぞ」

一部の市民は喜び勇み、武器を手に同志たちに合流したが、なにぶん、ことが急ゆえ、半信半疑で家にこもっているものが大半であった。

 

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