【前回記事を読む】深い雪山を進み行方不明になった青年の体は、春になって雪解けのあと見つかった。体の近くに残されていたのは…
風の部 霧は、アンダンテで流れ行く
第二章
1966年、ひろしが中学生の頃、イギリスからビートルズがやってきた。
ひろしも、SPレコードを聴きながら、エレキギターを友人たちと弾いて、いつかロックバンドを結成しようと話しあっていた。
そんなひろしだったが、それほど勉強しなくても県立高校に入学できた。両親は教育費の事もあり、少なくとも何処かの国立大学に入学してくれるだろうと、喜んでくれた。
漢文の授業で教わった、杜牧(とぼく)の五言絶句「清明」が何故か気に入っていた。酒という言葉に反応していたのだろうか。
清明の時節 雨紛紛
路上の行人 魂を絶たんと欲す
借問す 酒家は何れの処にか有る
牧童 遥かに指す 杏花(きょうか)の村
昔の中国の酒屋はどんな店だったんだろう。
杏花とはどんな花だろう。白くて淡い桃色の杏(あんず)の花の林の中、焼酎のような酒を呑ませる茶店だろうか? 「白酒」という酒があるときいたことがある。