【前回の記事を読む】「あたしの姉さんが、ママなの。だからついてきなよ」…実家が銀座のクラブをやっている同級生についていくと…

Ore Joe! 俺たちの青春

希恵の姉の店は、銀座四丁目の彩夢ビルの四階にあった。

エレベーターに乗って、4階のドアが開くと、そこは姉の経営する会員制クラブだった。

希恵は手招きするように、ヨシオをクラブの決められた席に座らせると、「ちょっと待ってて」といって、奥の部屋に消えていった。

その席の壁には、日章旗を担いで行進する旧日本軍の歩兵の行進が、現代美術風に描いてあった。

タイトルが貼ってあった。

「インパールの白い夕陽」

希恵が戻ってきた。

「これどうしたの」と聞くと、

「私のお爺ちゃんが、インパールの思い出を描いたんだって。私は戦争は嫌いだよ。お爺ちゃんは日本軍として、戦えない状況のなかで戦ったんだって」

「あの有名なインパール作戦だからね」

ヨシオは、家でよく聞かされているから、オウム返しに答えた。

「また、うちのお爺ちゃん、ヨシオのところに行ったんでしょ」

「ああ、毎年決まった日にちに、同じ時間に来るさ」

「お爺ちゃん、上官のお参りに行くといって、いつも、飛び出していくのよ」

そういうと、希恵は煙草を取り出して、すこし、吸った。

絵は眩しいほどに白く輝く夕日があった。

「着替えてくる。少し席を外すわ」

希恵が席を外すとすぐに、ボーイがテーブルにワインを運んできた。

「希恵さんからです」

と言って、ボーイはニヤリとして親指を立てて行った。

ヨシオは、高級ワインなんて飲んだことはなかった。ワイングラスを揺らして香りを嗅ぐことぐらいは知っていたので、周りの客に合わせるように、少し飲んだ。随分高いものであることはすぐに分かった。溶けるような格調高さは、周りの景色にマッチしていた。