いつの間にか、近所の人たちからは「喧嘩屋敷」と呼ばれるようになっていた。家の中は毎日不穏な空気に包まれ、いつ何時、徳一が大声を出して物を壊し、暴れだすか予測できなかった。
家の中にいてその声が聞こえだすと、千津は心臓がドキドキしだした。自分を可愛がってくれた徳一と、父とが争っている。どうしてこうなったのか、自分にはわからないし、どうすることもできない。
家に漂う、ギスギスした雰囲気の影響は、彼女にも及んできた。
中学生になる頃から、千津は、飯炊きや風呂焚きなどを少しずつやるようになっていた。掃き掃除は、潔癖症の信吾の指示で、客が帰るたび、何度もやらされた。
兄姉たちは、千津が少しは家の役に立つようになり重宝するようになったが、言いつけてすぐに動かないと怒った。
この頃、本庄家にもテレビが設置され、千津は面白い番組があると、
「後でやるから」
と言うことが多くなっていた。文句を言われて口答えすると、げんこつが飛んできた。
一番しつこかったのが洋平である。逃げるとどこまでも追いかけ回した。ある時、彼につかまり畳の上に押し倒され、押さえ込まれた。洋平の息が臭った。
そこに丁度、つねが通りかかった。
つねは一瞥すると、
「千津に変なことをしたら、ただでは済まないからな」
すごい形相で彼を睨んだ。その剣幕に洋平は千津から手を離し、慌てて部屋から出て行った。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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