変容

通りで数人が、生垣や板塀の隙間から本庄の家の中を覗き込み、様子をうかがっていた。

外にまで響く男の怒鳴りあう大声、その喧嘩を止めさせようとしているのか、女たちのかん高い声。

近所の人たちは聞き耳をたて、この家で何事が起こっているのか探ろうとしていた。

取っ組み合っていたのは、剛三と徳一である。長テーブルで酒を飲んでいた徳一が、突然大声を出し、食器を叩き割って暴れ、制止しようとした剛三との間でもめだした。

それは、一度だけですまなかった。それから後、何度も同じことが繰り返されることとなった。

徳一はここ数年、悶々としていた。

妻の泰子の実家では、彼と同い年の長男が家督を譲り受け、仕事に精を出していた。

 

それに引き換え、自分はどうだ。嫁をもらい四十にもなるのに、親から小遣い程度を渡され甘んじて生活している。仕事は以前から、自分たち若い者たちが中心にやっているというのに。

剛三も六十をとうに過ぎていたが、家の決め事や経済的実権は、彼とつねが握っていた。

父親に似て、実直ではあるが口が重く、自分の思いや考えをうまく表現することが不得手な彼は、酒の力を借りて感情を暴発させたのである。