「本庄様、お待ちしておりました」

東雲(しののめ)児童養護施設所長・香川東雲(かがわとううん)がにこやかに夫妻を出迎えた。

この香川所長が前出の卓也の学友・赤羽猪一郎の父親であり赤羽総合記念病院本院の院長・赤羽松造(しょうぞう)と古くからの知り合いなのだった。

「今日はお世話になります。本庄卓也と申します。こちらは妻の貴和子です。よろしくお願いいたします」

深々と頭を下げると、

「赤羽松造院長とは長年のお付き合いです。この東雲児童養護施設を創設する際にも大変なご尽力を頂戴しました。

ここの子供たちの健康診断から予防接種、病気治療まで引き受けてくださっている。今回はご子息・猪一郎さんのご友人からのたってのご依頼……

間違いなく気に入っていただける子をご紹介できるのは光栄の極み。どうぞお気持ちを楽になさって」

香川所長のあっけらかんとした物言いに若干の違和感を覚えつつ、このくらい事務的な方が、断わるにしても断わりやすいのかもしれない、と卓也は思い直す。

「こちらがいくら自信を持ってご紹介しても、肝心の本庄さんが気に入らなければ始まらない。こういうことには相性があります。

ですから、万一お気に召さなくてもお断わりには何の遠慮もいりません。折をみて別の子をご紹介することもできますし。

第一子供たちは慣れっこです、選ばれないということに」

 

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