たとえばこのあたりに、飛鳥時代のお寺があったとしますね。それを修復せないかん。実物はそこにあるんですが、屋根を支えている人型束という木の部材は、なんでこんなカタチなんだろう。いったい、なにをどう気づかいしてこうなったのか。いまある建築技術と道具から考えていても、わからんのですよ。

木組みを解いて、調べていくんですね。学校や企業の先生方にも分析していただきます。先代からの口伝や文献も大切です。地域文化や信仰、自然の中に、ぼんやりと答えらしきものが見つかることもあります。さて、意味はうっすら見えてきたが、道具がない。じゃぁ、道具もつくらんといかん。……私の仕事の大半は、謎解きと妄想みたいなもんです。

「私らは、道具づかいを人間だけでなく機械にも伝承しています。職人技のよくわからない暗黙知を、データにして見える化するわけですな。ただ、ものごとは本当にすべて、見えるようになるもんでしょうかね。それに、見えるもんばかりに頼っていたら、人間は、見えない力……新しい暗黙知を生み出せなくなるんじゃないかと、心配なんです」

たとえば伝統建築の柱は、木のクセを読み、曲がったものをそのまま使うことがあります。それが風情だというのもありますが、曲がったものを削ってまっすぐにしても、その木には曲がった特性が残ります。そのうち曲がる。無理をさせているから。削ってまっすぐ揃えれば均質できれいですが、要するに、味気のない規格品になるわけです。

「ひとも同じでしょう。みなを同じように削れば、規格品になります」

よし、この曲がり木は床の間にそのまま使おう。当たり前の木づかいを超えるような、想像力の豊かな目利きは、時間をかけて育てなくてもいいんでしょうか。人間が、檜の大樹のように、クセを活かしながらじっくり伸びてひろがることは、もう叶わないのでしょうか。

次回更新は2月18日(水)、11時の予定です。

 

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