【前回の記事を読む】「死んで生まれ変わってでも結婚する」――欲望と禁忌の狭間で立ち尽くした初恋の相手は、いとこだった……

あの世で、君と結ばれる

数日後、母から悲しい知らせを聞いた。

「Mちゃんが、家出して、行方不明だって。

Mちゃんが、こちらへ来ていないか電話があった。自殺しているかもしれない」

夫や義父母とうまくいかなかったらしい。随分つらい生活であったようだ。

僕は修善寺へ行き、階段に腰を下ろした。

M子は、きっとここに来る。そう思いながら、雲一つない大きな空を見上げた。

M子に呼びかけた。早く会いたい。すぐに結婚しよう。親達が何と言おうと……。

しばらくして、眠気を感じ、目を閉じた。

僕の名が呼ばれたように思い、飛び起きた。遠くに、一人の女性の姿が見えた。大声で叫びながら、勢いよく、走り出した。】

俺が学生時代に書いた小説は、ここで終わっている。たまたま、これから書く作品と同じタイトル・テーマであるので、驚いている。大学生と呆けた高齢者、その間には長い歳月の隔たりがあるが……。感無量である。

これを物語の最後に置こうかとも思った。俺がその作品を手にして、読んだのは、これから書く出来事の後のことであるから。しかし、実際にことが起きた順番は、逆である。先のことを書かないと、後のことがわからない。その理屈に従うことにした。)

これから書くのも、小説である。認知症の老人が小説を書いたら、どうなるか。自分が書いたことを忘れてしまう、めちゃくちゃなものにならなければよいが。

それでは、何とかこの錆び付いた頭を奮い立たせ、最近あった印象深い出来事を書くことにしよう。