さて、いざ、ぶ台に上がると、思っていたより順調に進んで行った。

最後になって、問題の足ふみになった。僕はやっぱり上がってしまって、最後の足ふみを忘れ、音楽が終わるまで、オルガンの周りを回っていた。先生にはしかられなかったけれど、それを知っている父に、

「なんだ、お前はそこで足ふみをするんじゃなかったのか」

と言われて、初めて気がついたようなわけ。

やっと終わったものの、まだ一時半。帰るには早すぎると思い、鎌倉(かまくら)幕府の初代将軍源頼朝(よりとも)の父、義朝が死んだ寺に行った。

源義朝は、お風呂に入っているときに暗殺されて、木刀の一本でもあれば、助かっただろうにと、自分の名前を書いた木刀が山ほどほう納してあった。

それからそこのお坊さんに案内してもらって、馬を見に行った。お馬さんにみかんの皮をやると、ものすごい鼻息でにおいをかいで、スススッと、口で吸ってしまう。聡はおそるおそる馬をなでている。僕はへっちゃらだったけれどもやっぱりおそがくて(おそろしくて)、なかなか馬になれなかった。

コラム 「お稚児さん」

稚児とは、神社、寺院の祭礼、法会などで、化粧をして昔の衣装を身につけ行列にでる男女児のこと。そういう行列に参加する行事のことを「稚児行列」とか「お稚児さん」と呼んでいるようだ。

私のお稚児さん、母と

七歳から十二歳くらいまでの子どもが対象で、このとき稚児は美しく着飾り、おしろいを塗り、額には呪術的な文様などをつけ、馬に乗りあるいはおとなの肩車に乗せられて社殿に運ばれ、そこでお供え物をしたり、舞踊を奉納する。

今では、神社、寺院の祭礼、法会などの機会に、子どもの無病息災を祈り、成長を願う儀式として執り行われているようだ。

子どものころは七五三、お稚児さん、お遊戯会とお化粧をさせられる機会が多かった。そのたびに泣きべそをかいて、よく母を困らせた。

 

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