「問題は何ですか?」

「問題は……何で、私を選んだかっていうことやねん」

そう、それなのだ。それが大いなる疑問なのだ。

いきなり弟子入り志願をしてきた時、喜之介を選んだ理由を「芸と人柄です」。そう述べていた椿沢だったが、喜之介は本当なのか、にわかには信じがたく、もっと詳しく聞きたかった。

「他に売れてる噺家や、僕よりうまい人もいっぱいいると思うんやけど、何で?」

「それは芸と人柄です」

あの時と同じ答え。

「いや、もっと具体的に」

「あのう、それは履歴書に書かせてもらいました」

それも履歴書に書いてあるのか。確認してみる。志望動機の欄に書かれていた。

花楽亭喜之介師匠の舞台からは、その人柄が滲み出ている。どんな登場人物を演じてもそれは同様で……そんな書き出しから始まり、喜之介を絶賛する文章が続いた。

人柄については、自分のことをどこまでちゃんと知っているのかという疑問があったが、正直、嫌な気はしなかった。むしろめちゃくちゃ嬉しい! こんなふうに自分を見てくれていた人が存在したんだ。

「分かっていただけましたか?」

祐斗のほうから声をかけてきた。

「あ、ハイ」

幸福感に浸っていた喜之介は現実に戻った。自分を評価してくれているのはとても嬉しい。だが、即、「弟子にします」と返事をして良いものか迷った。

弟子入りの面談というものが初めてだし、他に何を聞けば良いのか?

「社会人落語の大会で良い成績を収められているようやけど、ちょっと、ここでやってみてもらってもかまへん?」

思いも寄らず喜之介はそんなことを言ってみた。言わば実技試験みたいなもの?

「分かりました」

祐斗は動揺せずにその申し入れを受け入れた。

「じゃあ、いきます」