岩下の件について報告書を出した数日後。最近溜まりに溜まったストレスを発散しようと、京弥のバーにやってくると、カウンターに礼が座っていた。

「えっ、何してるの、ここで」

「プライベートの水瀬さんと話したいと思って」

あれから岩下の抱えていた仕事も、礼が手伝ってくれたおかげでうまく分散し、スリム化も出来た。そのおかげで、岩下がいなくてもスムーズに仕事が回るようになった気がする。

これまで無駄なことを繰り返していたのだということを実感すると同時に、若い子の適応力に驚いていた。

カウンターで隣に座り、いつもの酒を頼む。

「吉川くんには、本当に頭が上がらないわ。この状況、私だけだったらきつかったもん。本当にありがとう」

「今はプライベートなんで。仕事の話はやめましょうよ」

そう言われて言葉に詰まる。

「そんなこと言ったって、私達ってプライベートの話をするような間柄じゃないでしょう?」

「そうですか? 俺は全然したいと思いますけど」

(それはどういう意味……?)

「ここで仕事の話をするのは、コンプラ的にもよくないですし」

「まぁ、確かに」

そう言いながら、何を話せばいいかと考えを巡らせる。

(そういえば、私は全然彼のプライベートを知らないな)

「吉川君って、休日は何してるの?」

「何もしてないですね」

「ええ?」

「友だちに誘われたら遊びに行くし、することなかったら映画観るとかしてます」

「それだけ?」

「まぁ、たまにカメラ持って出かけたり……」

「カメラ? そういうのが好きなの?」

「趣味程度ですけど」

素直にカメラが好きとは言わないところを見ると、それほどおおっぴらにしている趣味ではないのだろう。