【前回の記事を読む】良い雰囲気になって「次のステップに進みたい」と言われた夜、病気で左胸を切除したことを伝えた。すると、彼は…
訳アリな私でも、愛してくれますか
「はい。だって、笹川さんにも選ぶ権利がありますから。選ぶためには、きちんと情報を提示しないとそれは詐欺だって思って……だって、訳あり商品だってわかっていて買うならまだいいですけど、最初からそれを告知していなければそれは相手の人への裏切りじゃないですか」
「くるみさん、あなたは商品ではありません。あなたは人間です。僕に選ぶ権利があるとするなら、あなたに言いたくないことは言わないという権利があると思うのですが」
「でも、あとから知って後悔してほしくないんです。その……恋人関係になったら、嫌でもお互いの身体を見ることになるだろうし、そのときに失望されたくなくて……」
「僕はそれを知っても、くるみさんへの思いは変わりません。というか、そのくらいで変わるような気持ちなら、恋とは言わないと思います」
「恋……」
その言葉に、頬が熱くなる。
「くるみさんは、くるみさんの思うように行動していいんです。くるみさんが嫌だと思うことを、相手のためにと自分からする必要ないんですよ。だから、くるみさんが僕に伝えたいと思ったタイミングで伝えていいし、伝えたくなかったら伝えなくてもよかったんです」
「そう、なんですね……」
「だから僕は僕がくるみさんを誘いたいから誘うし、くるみさんはそれが嫌だったら断れるんです。僕のために行きたくない誘いにまでのる必要はないんですよ」
くるみの心に、じんわりと刺さるものがある。
(こんなこと、この年になるまで気づかなかったなんてな……)
「……笹川さん」
「はい」
「私も、次のステップに連れて行ってくれますか……? 笹川さんと、恋がしたいです」
「では、これから改めて、よろしくお願いします」
「はい」
2人の間にむずがゆい空気が流れる。それでもくるみは、笹川の手が自分の手を温めてくれていることがうれしくて、このままこのときが続けばいいと思った。