【前回記事を読む】老人ホームで「昨日の夜、襲われたの…当直の男性がレイプしてきたの。」女性の布団には、「硬めの白い毛」が付着していて…

第1章 利用者さんとずっと一緒

早く死なせてください

堀内さんは、デイサービスに通いながら、タカシ先生の往診も受けているおばあさんです。

今日も服部を連れて往診に行くと、

「先生、こんな99歳にもなるばあさん、早く死なせてください」

といつも言います。タカシ先生は慣れた様子で、軽く堀内さんをかわします。

「最近99歳なんて珍しくないよ。110歳の奈良県最高齢のおじいちゃんも診ているんだから」

「先生すごいですね。私はもう十分です。この前息子が脳梗塞になって、お嫁さんも介護で大変そうだし。生きていても皆に迷惑かけるだけだから。それより先生、今朝からめまいがして何か調子が悪いんですよ。どうしたのかしら」

「どれどれ、ちょっと診てみましょうか」

と言ってタカシ先生は診察を始めました。

「うーん、上の血圧が180もあるなあ、薬はきちんと飲みましたか」

「はい。先生の出された薬は、毎日きちんと飲んでいます」

「手足が動きにくかったり、話しにくいという事はありませんか」

「めまいと頭痛以外はないですね」

「今日は横になってゆっくり休んでいてください。血の検査と脳のMRI予約しておきますね」

「先生、大丈夫ですか。私死んだりしませんよね」

「今、早く死なせてください、と言ったばかりじゃないですか」

「……」

往診が終わって、自動車の中でカルテを整理していると、堀内さんが庭に出てきて、お稲荷さんに何か必死に拝んでいます。服部が、

「堀内さん、お稲荷さんに死にたくないからどうぞお守りください。と拝んでるみたいですよ」

「うーん、女は何歳になっても嘘つきだねえ、僕が若い女の子に手玉に取られるのも無理ないか」

「先生、いつもそこに行きつくね」

「……」