【前回の記事を読む】夫と娘、息子を相次いで亡くし、レンタル喪服で自宅葬へ…棺の前には鑑識が行ったり来たりして、不審な死の真相を探っていた。

サイコ2――死の予言者

「5000万? さすがにそれはないわよ」

「払えないのであれば私は協力しない。既に決定した運命を変えるためには莫大な精神エネルギーを消費する。それで死ぬべき命が助かるのなら5000万は安い方だ」

貴子はしばらくためらっていたが、やがて意を決して言った。

「何言ってるか分からないけど、あんたが本当に私の命を救ってくれるのなら5000万払うわ。さあ、この女を何とかしてちょうだい」

「お引き受けしました」

そう言うと賽子はおもむろに席を立ち、棺の前で華怜と向かい合った。華怜も負けじと賽子を細い目で睨みつけた。

「インチキ占い師はそろそろご退場願おうか」

「私がインチキですって? 私は今まで3人の死亡日時を正確に言い当てた。それが私が本物の予言者である何よりの証拠です」

「確かにあの予言は本物だ。何故なら私自身も全く同じ予知をしたからな。だが、おまえには超能力(フォルス)を全く感じない。おまえはただの凡人に過ぎない。

つまり、この事件の裏には本物の予知能力者が別に隠れている。その人物が彼らの死を予知し、おまえにその内容を教え、占いとして皆に伝えさせた。それがこの事件の真相だ。そしてその予知能力者とは……」

皆ごくりと唾を呑み込んだ。賽子は右手で目の前の棺をまっすぐに指差した。

「小佐々崇夫、おまえだ」

「えっ!」

驚きのあまり麻利衣は頭が真っ白になった。

「どういうこと? 小佐々さんが予知能力者?」

「前にも言ったが、本物の超能力者(サイキック)というのは自分の能力を世間どころか家族にも秘密にすることが多いのだ。

私は初めて小佐々氏に会った時、彼が予知能力者であることにすぐに気づいた。そして彼の記憶や思考も全てテレパシーで読み取った。

小佐々氏は昔から予知能力があった。だから株価がどう動くかも全て手に取るように分かったが、一儲けするとしばらく株には手を出さなかった。それを繰り返して資産を少しずつ増やし、会社を大きくした。何故ならそのまま株だけで巨万の富を得ればインサイダー取引でもしているんじゃないかとかあらぬ疑いをかけられかねないからな。

予知能力者にとって株やギャンブルで大儲けするのは簡単な方程式を解くのと同じで大した歓びではないのだ。だから彼自身『自分は運がいい』と、それだけで済ませていたのだ。

だが、彼の予知能力の範囲はせいぜい1年程だった。そうでなければ前妻が亡くなった時に優しくしてくれた貴子さんと再婚などしなかっただろうからな。彼女は新婚の1年間は猫を被っていたが、その後本性を露わにした。嫌気がさした彼はこの別荘に引き籠ることになるわけだが、今から1年程前、恐ろしい未来視をした。