「結局何が言いたいかというと、くるみさんがもしやりたいことがあるなら、飛び込んでみるのもいいんじゃないかなってことです。余計な口出しをしてすみません」
「いえ、ありがとうございます。なんだか、すごく響きました。ちゃんと自分の人生に、向き合ってみます」
くるみの言葉で、笹川も笑顔になる。2人は感想戦の続きをして、ディナーを終えた。
「流石に、ちょっと疲れましたね」
「はい……」
商業施設の屋上、夜景が見えるところに座って腰を落ち着ける。ディナーのあと、すぐに別れる気にはなれなかった。もっと話したかったし、あのことを打ち明けなくてはならない。
(笹川さんに、胸の傷のこと言わなきゃ……)
言わなきゃと思うと、心がずんと重くなる。笹川はどういう反応をするだろうか。せっかくデートに誘ってくれたのに、その気持ちを無下にしてしまわないだろうか。
「夜は結構、涼しいものですね、寒くはないですか?」
「大丈夫です」
言葉が途切れがちになるくるみの様子に気づいたのか、笹川が困ったように眉を寄せて少し顔を覗き込んでくる。
「どうかしましたか……?」
「あの……急にこんなことを聞かれても困るのはわかってるんですが……」
くるみはそう前置きをして、口を開いた。
「これまではランチ友達で、その、今はデートに誘ってもらったんですが……それは、次のステップに進みたい……という気持ちの現れだと受け取っていいんでしょうか?」
「はい。私はくるみさんと、次のステップに進みたいと思っています」
よどみなく、すぐに言葉を返してくれる。それだけで笹川の思いが伝わってくるようだった。しかし、ここで言葉を止めたら、もう一生言えない気がする。くるみは手をギュッと握って力を入れ、自分に鞭打った。
「笹川さんがそう思ってくださっているなら、言わなきゃいけないことがあります」
「なんでしょう?」
「……私、実は左の胸がないんです。中学校の頃、病気で切除して……その、人間としてはちょっと訳あり商品、みたいな感じなんです。だから、この先に進むかどうかは、それを聞いてから決めてもらったほうが、いいかなって──」
そこまで言った時、笹川はベンチに置かれていたくるみの手に自分の手を重ねた。
「それが、僕のくるみさんへの気持ちに影響を及ぼすと思ったんですか?」
次回更新は2月12日(木)、11時の予定です。
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