【前回の記事を読む】クラスの男子が作ったランキングの最下層に私の名前が…母に相談すると、『かわいく生んであげられなくてごめんね』

訳アリな私でも、愛してくれますか

土曜日。くるみは笹川に指定された待ち合わせ場所に向かう。

「あ、くるみさん、こちらです」

「笹川さん!」

待ち合わせ場所で、朗らかに笑っている笹川に手をふる。今日はまずくるみの見たかった広告の展覧会に行き、その後建築家の展覧会へ行く予定である。

「じゃあ、早速行きましょうか」

「はい」

展覧会では互いに適度な距離を保ちつつ、静かに鑑賞し、広告と建築、2つの展覧会を終えた。

 そして小洒落たディナーの席で、お互いの感想を言い合う。

「どうでしたか、広告の展覧会は」

「すごく楽しかったです! やっぱり一流の人達が作るものって、心が揺さぶられますよね」

「そうですね。僕もすごく楽しかったです。勉強になるし、自分の刺激にもなりますよね」

「はい! 私、昔から絵とかデザインとかを見るのが好きで……私は営業なのでデザインとかはできないんですけど、そういうのもやってみたいなぁなんて今日ちょっとは思っちゃいました」

「いいじゃないですか。今もずっと営業で広告には携わってるんですもんね? 知見はありそうですし」

「でも、本当に違う世界線のお話ですよ? デザインの勉強とかしたことないし、今更キャリアチェンジも時既に遅し、というか……お姉ちゃんにも、30歳までに色々考えなさいって言われたんですけど、ずるずる来ちゃったんですよね」

「僕は、勉強するのに遅すぎるということはないと思いますよ。やってみたければ、まずは勉強してみるというのがいいのではないでしょうか」

「でも、私そういう才能ないなっていうのは自覚あるんです。だから、あくまで憧れで……」

「僕は、才能というのはないと思っています」

「ない、ですか……?」

「結局、すべては積み重ねだと思うんですよね。才能は努力の積み重ねでできているというか。小説家も画家も、幼少期からやり続けて試行錯誤したり、他の作品を見たり学んだりして、自分なりのアウトプットをしているんだと思うんです。

それが才能という生まれつき持った天性のものだという捉え方は、彼らの努力を無視した言葉だなと、僕は思っています。ピカソだって、昔から色々作風が変わっていますが、彼の中で1つ1つ思考し、重ねてきた結果だと思うんです。

それを最初から『ゲルニカ』だけを見て、彼の才能がこれを描かせたのだと言ったらそれは違うと思うんですよね」

「確かに……」

(今まで私は毎日忙しいからって逃げてたけど、そろそろきちんと向き合うべきなのかな)

くるみの心に笹川の言葉が刺さる。このまま予測可能な、無味乾燥な毎日を生きることが、自分の幸せだとは言い切れない気もする。