夜、俊雄さんが帰宅すると、全てを話した。
「そうだったのか……」
「うん。私も驚いたけど、ホッとしたかな。妊娠してなくて」
「……その事なんだけど……今日彼女の父親に言われたんだ。亜紀と離婚して悠希さんと一緒になるようにって。妊娠させた責任を取るのが男ってもんだってね」
「そ、そうだったんだ。でもさ、妊娠してないんだし、もう上司でもないし。何か問題があるの?」
「もし……もし、悠希さんを捨てる事があるなら、彼女は命を絶つかもしれないって言われて……」
「捨てるもなにも、付き合ってないじゃない」
「そうなんだけど……彼女を自殺に追い込むのは本意じゃない」
ああ、俊雄さんは優しい。でもそこがウイークポイントでもある。優しさに付け込まれたら、俊雄さんは自分を貫けない。
「……悠希さんを取るの?」
「……」
「ちょっと、何で無言なの!? 私を選んだんじゃないの!? 結婚して……これから幸せな生活が続く……そうじゃないの!?」
私より悠希さんを大事にするような俊雄さんに、腹が立つというより、情けないというか、呆れるというか……悲しかった。
「もういい!」
私はテーブルをバンッと叩いて、鞄を手に外へ飛び出した。
行く当てなんてないのに……
次回更新は2月15日(日)、19時の予定です。
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