【前回の記事を読む】「またお会いする日を楽しみにしています。」と言っていたのに、“またお会いする日”はお葬式になってしまった。
第1章 教育現場の諸問題
いじめ文化の温床とは
1985〜1990年頃、お笑いタレント全盛期で、笑いを取るための悪ふざけテレビ番組が、毎日のように垂れ流されていました。時を同じくして、学級崩壊やいじめ、不登校が都会の規模の大きな学校を中心に全国的に広がり、担任たちはもちろん、対象地域の学校も教育委員会も困り果てていたのです。
無料動画サイトで恐ろしい映像を見つけたと、ある方が1985年放送のテレビ番組の録画を見た感想をフェイスブックで発信していました。
あるお笑いコンビが司会を務め、公募とみられる小学生100人が出演して、「好きな遊び」をテーマにアンケート結果を紹介していたのだとか。驚いたのは第3位。なんと「弱いものいじめ」だったのだそうです。
子どもらは歓声を上げ、調子に乗った男子がそばの友達を指さして、「俺、こいつをしょっちゅういじめている」と。
いじめに対する当時の、今思えばおぞましい「軽さ」を記憶しているという内容でした。この番組に出演していた子どもたちは、2023年時点で40代半ばから後半の親になっている方も多いはずですが、その映像を今、正視できるでしょうか。
中学生が「生き地獄」と書き残して自殺した「葬式ごっこ」事件は、この話の翌年に起こったことでした。
子どもの好きな遊びの第3位がいじめになった背景で、いじめ文化がテレビで花開いていました。悪ふざけでいじめることやいじめられることを仕事にしている芸人がたくさんいて、それを見ている子どもたちが、テレビで行われていることを真似して、遊びの一環としていじめを楽しんでいたのです。
ここでも言えることは、効率主義で詰め込まれた規模の大きな学校ほど、学級崩壊やいじめが起こりやすい環境だったということです。
当時、小規模校勤務だった私は、そんな問題とは無縁でした。しかし、後年勤めた大規模校では、いじめ問題を契機に学級崩壊を起こしたクラスの6年生担任の教師がたびたび休むようになり、教務主任だったことで、途中から担任の代わりをして仕事に忙殺され、胃を壊して入院した経験があります。
やはり、日本の教育の十把一絡げの効率主義も、子どもたちの荒れや教師の目が届きにくいいじめ問題に大きな影響を与えていたと思います。
また、いじめを助長するような悪ふざけ文化は、今もメディアやユーチューブなどで垂れ流されており、根強く残っています。
日本特有の、一人の教師に多くの負担を押しつける効率主義と、大人の人権感覚の欠落した笑いを求める感覚とが、子どもたちの心に大きな影を落とし、困難な教育事情を形成してきたことを忘れてはいけないと思います。