「拘束っていうんですか? 手足をベッドに括り付けられて。私が行ったら、充、おいおい泣いたんです。なんとか手を抜こうとしたのか、擦り切れて手首が赤くなってました。

すぐにナースステーションに行って、訳を聞いたら、暴れてチューブを外すし、ベッドからずり落ちるから拘束しましたっていうんです。そう言われると、それ以上言い返せなくて。私は縛られたままの手足をさすってやるのが精一杯でした。

だって、お医者さんが縛らないといけないっていうんだから、それ相応の理由があると思うじゃないですか。縛らないと充の命に関わるんだ、そう自分に言い聞かせて、一生懸命さすりました」

伸枝は思い出すのも辛そうに、涙ぐんだ。

「でも、前の病室では暴れたことなんかなかったじゃないですか。大体、ほとんど動けないんですよ。筋肉も落ちてるし。座ることだってできるかどうか。おかしいとは思ったんです。なんで暴れるんだろうって。縛られるから暴れるんじゃないか、逆効果なんじゃないかって。でも……思うだけで、面会時間が終わると、帰るしかなくて。

だけどね、帰ろうとすると、充が悲しそうな目をするんです。でも、どうすることもできない。ここにいてもらうしかない。私はまた明日、仕事がある。後ろ髪を引かれる思いで病室を後にしました。まさか、それが最後になるなんて、思ってもいなかった……」

「さいご?」

「その夜、というか、午前三時頃、電話が来て、……亡くなったっていうんです」

「いきなりですか? 危篤とかじゃなくて?」

「急変して手当てしたんだけど、亡くなったって。すぐに行きましたよ。ここからだから、車で十分もかからない。でも死んでいた。本当に死んでいた。冷たくなって……」

「……お気持ち、わかります。そんな急に亡くなったと言われても、納得できないでしょうね」

〈殺された〉というのは、そういう意味なんだ、とまさ子は納得した。