【前回の記事を読む】バイク事故に巻き込まれ、重傷を負った息子。加害者に補償を求めるも、「賠償に充てられるものはない」ということが分かり…
第二章 未来
笑い声があちこちから聞こえる。風船を使った遊びのようなものに興じているグループはまだしも、元は柔道の選手だったのか、大柄のPTがマットにうつ伏せになった患者にのしかかるような姿勢で「もっと、もっと、もっと曲げて!」と叫んでいる顔も笑顔だ。
曲がらない膝関節を、トントンと叩きながらその目は優しく笑っている。その下で、一見無理に曲げさせられている患者も、「できない〜、先生無理! できないよ〜!」と言いながら、顔は笑っているのだ。
患者と医療者の間には、信頼があった。愛が見えた。まさ子は、ほっとした。
「PTさんっていろいろなことをやるんですね」
まさ子がそう言うと、奥井はうなずく。
「リハビリも、透さんのような脳神経障害の方、骨折など整形外科系の方、リウマチのような免疫系の病気まで、いろいろです。PTって、僕はもっと知られていい職業だと思ってます」
奥井は独り言のようにそう呟くと、「まずはうちのボスにあってください」とストレッチャーから離れ、一人の白衣の男性の方に歩いていき、二人でまさ子のもとに戻ってきた。メガネをかけたその大柄な中年男性は、肩幅が広く胸にも厚みがあったが、少し右足を引きずっているように見えた。
「城田透くんとお母様ですね。はじめまして、チーフの広澤です」
「よろしくお願いいたします」
広澤は、まさ子への挨拶が済むと、すぐにストレッチャーの上の透に話しかけた。
「城田さん、よく頑張りましたね。あなたの病状でここまで来られる方は、本当に一握りです。よく頑張りました。でも、焦ってはいけない。焦らずに少しずつ、時間をかけて一つ一つ、機能を回復していきましょう。うんうん、大丈夫。絶対によくなるから」
広澤はまさ子にも声をかけた。
「お母さんも大変でしたね。お母さんもよく頑張った。これからはみんなで一緒に力を合わせましょう。いつかお家で生活できるように」