「うちの会社、可愛い人が多いからね。みんな可愛い子にも慣れてるんじゃない? そんな中わざわざブスに行く必要も──」
「そういうの、やめたほうがいいと思うけど」
「え……」
隣にいた秋斗が、唐突に口を挟んできた。その一言に、さっきまで盛り上がっていた大森と桃川も言葉をなくして、場が静まり返る。
「人のこと見た目で判断するなって、誰かに言われたりしなかったわけ?」
それでも周囲の空気を無視して続ける秋斗に、理子の心がヒリヒリする。
「も、もう、いいじゃん、こういうのはノリだから……」
「あんたも、自分の容姿けなすのやめたら?」
冷たい眼差しで刺され、理子の表情も固まる。
「俺、もう食ったから行くわ」
いくらかお金を置いて、秋斗が立ち上がる。そして出ていくまで、誰も喋らなかった。
「……」
秋斗が出ていくと、視線が理子に集まる。大森のどうすんだよ、という視線、川谷の苛立った視線、そしてここにいる誰もが理子の次の動向に注意を払っていた。
(この状況、どうしたらいいの!? 私がなにか言わないと……)
そうは思うが言葉が出てこない。いつもならまたここから盛り上げようとするが、今はメンタルが削られていてそれすら出来なかった。そもそもこの飲み会では自分は必要ともされていないのだ。ただみんなが桃川に会いたいがためにセッティングした機会。自分がいなくても成立する。それに気づいた瞬間、無意識のうちに財布を出していた。
「あ、私も……行くね。お疲れさまでした!」
理子はお金を置いてみんなに頭を下げ、居酒屋をあとにした。
次回更新は1月29日(木)、11時の予定です。
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