「それを聞かれるとちょっと恥ずかしい。私には変な趣味があってさ、ヒモとかロープとか、あるいは包帯とかを集めるのが好きだった。その手の物がないかと、あさってたの」
「それはまた、珍しい趣味ですこと」
ところがイチコの顔が急に真顔になった。
「ねえ、魔女玉をよく見て。びっくりするシーンがいまから始まるわよ」
――イチコがきょろきょろしている。何者かに声をかけられたようだが、その声の主が見当たらず困っている、そんな顔つきだ。すると目の前にあったマネキン人形が少し前かがみになってとつぜん喋った。
「お嬢ちゃん、おじさんとお友達にならない?」
ロボットだろうか。顔立ちもスタイルも理想的だ。顔の肌は白色でつやつやしている。黒のスーツ姿で黒のソフト帽をかぶっている。どこから迷い込んだのか、帽子には赤いテントウムシが止まっていたが、慌てるように飛び立った。マネキンが片手を伸ばして挨拶代わりに帽子を取ろうとしたからだ。
イチコは度肝を抜かれた。帽子と一緒に頭がすっぽり抜けて、首から上が大きなミミズになっていた。手は脱いだ帽子をつかんでいるが、帽子の下に顔もぶら下がっている。要するにマネキンの顔はあくまでもマスクだったようだ。
イチコは数回瞬きをした。するともうマネキンの顔は元に戻っている。マスクをかぶったのであろうが、目にもとまらぬ早業だった。彼女は飛び逃げた――
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