【前回の記事を読む】自閉症は、“親のしつけ方”や“愛情不足”、“放任”だと言われることもあった。脳科学の発展により、多くは解明されていくが…
第一部 自閉症の世界への道
第二章 実践小学校障害児教育 おひさま学級(仮名)
二人の自閉症男児
学校の近くにJRの線路があったが、私が赴任する前にY君が学校を抜けて線路に立ち入ったことがあり、お母さんはY君の転校を考えるほど思い悩んでいた。
そんな時期に私がおひさま学級を担任することになった。自分の考えた療育ができる、と毎日張り切って課題をつくった。
毎日かれらと接するうち、T君とY君の二人についてもそれぞれの特質がわかってきた。
T君は、簡単な言葉は出ていて数字に強い高機能自閉症だった。
スモールステップ(大きな目標や課題を実行可能な単位に小さく分解し、一歩ずつ着実に進めていく手法のこと)で丁寧に教えていくと、一年間でゼロ状態からたし算・ひき算・かけ算まで習得した。
Y君はオウム返しの単語はいくつか出たが、文字・数字は認識できず、なぞり書きがやっとだった。
彼の指導は、上履きを履く、授業中は着席する、休み時間に校庭に一人で遊びに出て戻ってこられるようにする、などを徹底した。
靴下を履き上履きも履いていられるように、いっときも彼から意識を離さず、靴下を脱いだらすぐ履かせる、を繰り返した。
授業中、着席が続くよう彼の近くに立って動きを止めながら授業をした。オウム返しで単語は出るようになったが、なぞり書き以上には進めなかった。
またY君は超偏食だったので、その改善にも力を入れた。私は毎日小さなタッパーに引き換え用の彼の好物を持って出勤した。
給食で少しずつ食べられるものが増え、スプーンさえつけなかったカレーは大好物の一つになった。
自閉症の特性について面白い発見があった。文献やテキストには、自閉症は人に対して関心がないように記述されているが、実際のかれらはそうではなかった。