第2章 老いを受け入れるということ

トラブルになりやすい高齢者の財産管理

私の両親の仲が悪かった原因のひとつは、父親が長年にわたり株の売買をしていたことです。始めたのは私が中学生ぐらいだったと記憶しています。

母によると、家1軒分くらい損をしているらしく、この件で両親は喧嘩が絶えませんでした。

そのため、長年私の頭にも証券会社の悪いイメージが刷り込まれていました。

母方の祖父は、お金は額に汗して稼ぐものという教えを持っていて、私もまったくその通りだと思い育ちました。

世の中には株の運用など、知識や運だけでお金を稼ぐ方があまたいますが、それは自分と別世界で起きている事象と考えています。

最近、父親がNISA口座を開設したことを察し、意見したのですが、当人は聞く耳も持ちません。

あの父親に意見する。私もよくよく考えての行動です。

父では埒(らち)があかないので仕方なしに、窮鼠(きゆうそ)猫を噛(か)む思いで証券会社に電話をかけてみました。

周知のように、各金融機関は、振り込め詐欺の予防に必死です。その金融機関が、80歳を過ぎた高齢者に、NISAという新しい金融システムを勧めるのはいかがなものでしょうか。

振り込め詐欺と投資はもちろんまったく別物ですが、明らかに損失が出る可能性が高いことをわかっていて、担当者がそのままにするのは、家族からしてみれば振り込め詐欺と変わりません。

私は、随分と鼻息を荒くして電話をかけました。

「あのー。大変に失礼なのですが、私の家はお宅様のせいで、両親の仲が悪くてしょうがないんですが」

今となっては、ものすごい唐突な話の切り出し方だったと思いますが、自分のこれまでに溜まった思いをすべてぶつけてやると意気込んでいたのです。