介護をしている人々の医師に対する切実な思い

私より若い医師も増えてきて、自分自身の介護経験のない方も担当しています。

そのような方たちは、ポータブルのトイレを朝洗いながら「いっぱい出てよかったね」と、本心から言ったことがないと思います。

朝、母の排泄物を処理することは、最初は私も嫌でした。それでも繰り返しやっていく中で、排泄物の臭いも母が生きている証拠だと考えられるようになりました。

そして、人間ひとり分の重さを支えることがどれだけ大変かも知られていないと思います。

病院へ母を連れて行った帰り道、突然の雨でどうすることもできず、思わず母を背負い、片手に歩行器、片手に荷物を持ち、必死で戻って来たこともありました。何度も何度も椅子やベッドから落ちてしまう母を何十回となく抱き起こしたために、私は自分の椎間板が、曲がってしまいました。

何も介護の経験をしていなければ高齢者の医療に携わってはいけないというわけではありません。ただし、患者や介護する家族がどのような状況で、どのような思いを持って、病院に来ているのかを少し想像してほしいのです。

次回更新は1月4日(日)、18時の予定です。

 

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