さっそく通院していた病院の医師にも話しましたが、決して薬が原因だったとは、認めてもらえませんでした。当然、総合病院にも、紹介してくれません。余程のことがないと、総合病院に紹介状を書いてもらえなかったのです。現在はますますこの傾向が強くなり、できれば個人クリニックにかかるように勧められるようです。

母は当初、通院していた病院の医師に対して怒りをぶつけ、医療裁判を起こしたいと何度も訴えかけてきました。もしも私があの時もっと医療の知識を持っていて母に加担していれば、医療裁判に突入していたでしょう。しかし私は、医療裁判にはまず勝てないだろうと反対したのです。

それは、勝算うんぬんの話ではなく、生半可な知識で動いて診てくれる病院をなくしたくないという思いと、母の体が裁判を起こせるほど元気ではなく、体調が心配だったからです。未だに、訴訟を起こさなくてよかったのかどうかはわかりませんが、患者の話を親身に聞いてくれず、少しも検証してくれなかった医師たちには反省を促したいものです。

そして、ようやく、母は良い医師に巡り合うことができました。口腔内の炎症がひどくて受診した耳鼻咽喉科の院長先生と意気投合し、先生が今までの経緯をすべて聞いてくれ、その上で総合病院を紹介してくれたのです。

次回更新は1月1日(木)、18時の予定です。

 

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