いっとき、彼の呼びかけに応じて何度か参加していた政治セクトのデモや集会からも、僕は次第に遠ざかる様になり、少しずつ距離も置き始める様になっていた。

そして益々活動家らしく過激になっていたNとは、それまでの互いの立場が逆転する様になり、彼はいつしか僕の面前から、現実的にも思想的にも、次第に別の世界に移っていったのである。あの時から、少しずつ変わっていく彼に、僕は名状し難い一抹の寂しさと不安を感じる様になっていた。

しかし、あの時代状況を考えれば、政治セクトの主張と行動に、彼がより惹きつけられていった事は、到底無理からぬ事でもあった。

確かに、僕にはすこぶる非現実的な言辞と行動にさえ思えたけれど、全てに対して自虐主義者に過ぎなかった僕よりは、容易には拭いきれぬ根源的な不幸と不条理を抱えていた彼を惹きつけるどこか魅力的な部分が、当時の政治セクトを形成していた、良質な活動家学生達の中に少なからずあった事もまた紛れのない事実なのであるから。

しかしそうは言っても、益々先鋭化しつつあった学生運動の環境に、完全に幻滅を抱いていた僕は、次第にその様な雰囲気からも、そして逆に、堪らぬほど非政治化しつつあった大学キャンパスの静かな雰囲気からも、すっかり離れる様になっていた。

そして、自分を取り巻くそうした環境が全て疎ましくなっていた僕は、高校以来、あれほど親しく信頼し合って接していたNからも、完全に遠ざかる様になっていた。