トスカーナ地方随一の名勝地、シエナに行きたいと言ったのは真世だった。十日間のイタリア旅行の中で、この町だけは絶対に見逃せない。

シエナはその昔、トスカーナの首都だったことがある。

しかし丘の上の狭い土地は人口増加に追い付かず、首都はフィレンツェに移った。

かつてメディチ家の根城だった証拠に、七個の丸薬のついた紋章入りの盾が街の建物の外壁に付いている。丸薬はその昔薬種商だったメディチ家の紋章であり、メディチという名前自体が〝薬屋〟という意味だ。

シエナの町はただ道を歩くだけで、家と家をつなぐ一つ一つの通路や小路が昔の面影そのままに町の歴史を物語ってくれる。

人一人やっと通れるかといった細長い小路。張り出したアーチの上には家の渡り廊下や小部屋が乗っかっている。町を散策するだけでどこか懐かしい〝既視感(デジャ・ヴュ)〟に捉われる。

 

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