ドゥモはそれ以上ものを言わず、じっと相手を見据えた。憐憫と反感と、そしてまだ彼の中にある、神聖な力を失わずにいられるだけの何かに対する尊敬とがないまぜになった、雄弁な視線。

「ああ、分かった。分かったよ。初回だけだ。今回だけだぞ。今回だけ特別に皮八枚で手を打ってやる。笛だと言ったな。任せとけ。お前さんが一吹きすればハミングアローがいちころになるお前さん専用の笛とメロディーを授けてやろう」

「ちがうよ、おじさん。僕が欲しいのは、彼女を誘い出してその気にさせる蠱惑の笛じゃないんだ」

笛作りの道具を取り出しはじめていたエルク・ドリーマーは、手を止めてドゥモを振り返り、変な顔で彼を見た。エルク・ドリーマーの眉間には大きくて平たいほくろがあって、顔を歪めるとそれが余計に誇張され、元々面白い顔がますます面白くなった。

ドゥモは後に、この時の彼の顔を何度も思い出すことになる。思い出すたびに面影は微妙に変わっていき、初めはただの素っ頓狂な印象だったものが、やがて切実な印象に成り変わっていった。

最期の時、エルク・ドリーマーは笑ってはおらず、悲しんでもいず、苦悩に顔を歪めてもいなかった。相手を威圧するほどの威厳に満ち、両手を組んで、レッドシダーに背をもたせかけながらも直立不動だった。

死にゆく者の唄を高らかに歌い、浴びる銃弾で蜂の巣になった後でさえ、彼はその姿勢のままだったのだ。インベーダー達に殺された人はみな頭皮を丸ごと剥がれてしまうのに、なぜかエルク・ドリーマーの頭皮だけは無事で、ドゥモが駆け付けた時には潔(いさぎよ)い死に様を思わせる跡だけがその場に残っていた。

だからドゥモは、襲撃犯を追いかけて殺害し、エルク・ドリーマーの頭皮を取り返すようなことはせずに済んだんだよ。

もう一度見せてよ。おじさんのあの変な顔。ドゥモはちょっと微笑んだが、返る木霊(こだま)はなかった。

 

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