麻利衣は動転して彼に何か言おうとしたが、彼は彼女を押し退けて賽子の前に仁王立ちになった。賽子は驚きもせずお茶を飲み続けている。

「どうして分かった」

鍬下が低く押し殺すような声で言った。

「どうして羽牟さんが犯人だと分かったのかと訊いてるんだ!」

「えっ!」

麻利衣は思わず声を上げた。

「羽牟さんが? でも羽牟さんは林良祐を殺す動機なんてないはずですよね」

「昨日までは僕もそう思っていた。だが、あの後署に帰った時、羽牟さんが自首したんだ」

「自首……」

「羽牟さんは以前から頭痛持ちで、増田脳神経外科病院にかかりつけで主治医は邦史郎氏だった。邦史郎氏は千晶さんがストーカーに狙われていると知ってたいへん心を痛めていた。だからそのことを思い切って刑事である羽牟さんに相談した。

だがその時に彼はただ『何とか林にストーキングをやめさせるいい方法はないでしょうか?』と訊ねただけだったそうだ。羽牟さんは自分がMRI検査を受けた際に、3月9日深夜に新しいMRIが搬入されることを放射線技師から聞いた。

それでソル・エクスプレスに連絡してその日の担当者を聞き出し、二人に報酬を支払ってMRIで林を殺害させた。この二人はもちろんそれが殺人だなんて思いもしなかったそうだ。警察の極秘任務だとかなんとか言われて、スマホのデータを破壊するのが目的だと思っていたらしい」

「ちょっと待ってください。ただストーキングについて相談されただけなのに何故殺人までしないといけないんですか? まさかお金?」

「いや、邦史郎氏はこの件に関して一銭も支払っていないそうだ。ただ、羽牟さんには林を殺す十分な動機があった」

「え?」

次回更新は1月4日(日)、21時の予定です。

 

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