私は、手術としてとりあえずできることはすべてやった。
まず前面の裂傷を修復した。心臓の壁を大きな針付きの糸で縫って閉鎖した後、動き続ける心臓からの出血を防ぐために、フェルトの帯で、修復した心臓の壁を補強した。次いで同じ操作を後面の裂傷にも行い、これを修復した。最後に後ろの心膜を修復した。心腔内にたまる血液を外に出すドレナージチューブを2本挿入して手術は一応終了した。
出血操作を確実に行い、術野の全ての組織について念入りに出血がないか確認した。手術操作がおおむね終了した後、私は心臓が止まっていた時間が長かったので、PCPSから離脱して、自分の心臓だけで全身の循環を維持することはすぐにはできないと判断した。PCPSを装着したまま手術室から集中治療室に移すことを決断した。
私はその時、手術をとりあえず終えることができた安堵感と小さな達成感を感じた。