【前回の記事を読む】初めてのパスポート、初めてのフランス——病を隠してまで私を送り出した両親の愛に気づいたのは帰国後だった。
1 フランスへの旅立ち
⬥ドタバタのパリ到着
中継を含み約17時間のフライトでフランス最大の国際空港シャルルドゴール空港に着いた。
この空港は1974年に開港しておりまだまだ新しい空港で、田舎者の私はフランスの空港の大きさに圧倒された。
荷物の受け取りや入国審査等一生懸命フランス語で話そうとしたのだが、3ケ月の付け焼刃、ぜんぜん通じない。相手の言う内容も全く理解できない。
手続きを片言の英語で押し切り、機内で知り合った日本人の二人にくっ付いていくことで何とかパリ市内行きのバスに乗れた。
空港から約30分。
バスがパリ市内に近づくと丘の上に白いサクレクール寺院が見えてきた。ここには世界最大級となるキリストと聖マリアのモザイク画が天井に描かれていることで有名だが、大阪のホテルでの研修中にクリスマスのディスプレイ用としてこの建物を砂糖菓子で作ることがあり、私もほんの一部参加した思い出がある。
空港でフランス語のアナウンスを聞いても、フランスに着いた感激はなかったが、遠い丘の上の白い建物を見て、やっとパリに着いたと実感し、これからの生活を思いわくわくしたのを覚えている。
パリのバスターミナルで先の二人と別れ、タクシーでホテルに向かった。しかしフランス語で行き先を言っても通じない。メモを見せて何とかホテルにたどり着いた。ホテルの部屋で一休みして駐仏日本大使館に向かった。
後に社長になる当時の開発部担当役員より、「大学時代の友人が大使館にいるのでパリに着いたら挨拶に行け。私の部下と言えば困ったときに助けてくれるだろう」との指示を受けていたのだ。
ホテルに日本語のできるコンシェルジュがいたので、日本大使館とルーアン行きの電車が出るサンラザール駅の場所と行き方を教えてもらった。
日本大使館は凱旋門、サンラザール駅は『オペラ座の怪人』の舞台となった大きな歌劇場がそれぞれの近くにある。