チーホは毎日、畑でおとうさんとおかあさんのお手伝(てつだ)いをするのが楽しい。

きょうも学校が終(お)わると、朝から二人が行っている畑に「ただいま!」と言って帰(かえ)ってきた。チーグも一緒サ。

畑にあるビニールハウスの中では、パッションフルーツの花がどんどん咲きはじめている。パッションフルーツにまるで花時計(はなどけい)のようなきれいな花が咲くと、クロマルハナバチたちはせっせと花の間を飛び回る。

たくさんの蜂がたくさんの花の間を行ったり来たりするんだ。

 

その蜂たちの働きでパッションフルーツが実を結ぶんだ。

しっかりと実を結んでぷくっとふくらんでくると、花は役目を終わりしぼんでくる。

実のまわりにへばりついてるその花(はな)がらを取(と)るのが、子どもたちの役目(やくめ)だ。

チーホとチーグが、一緒に帰ってくる午後(ごご)になると、もうハウスの中は暑(あつ)さでむんむんしている。

「チーホ、チーグ、おとうさん、一休みしよう」

おかあさんが外に出て、コップに冷たい麦茶(むぎちゃ)をついでくれた。みんなは少し日陰(ひかげ)の草の上に腰を下ろした。

おかあさんが、胸に下(さ)げた小さな土の笛を吹きはじめると、おとうさんは草の上に敷(し)いた茣蓙(ござ)に、手足(てあし)を広げて寝ころんだ。

うす青色(あおいろ)の空には雲がゆっくり流(なが)れている。

となりの広いサトウキビ畑に風が吹くと、サトウキビたちは順番に行儀よく頭を下げていく。

チーホは、こんな時間(じかん)が大好きなんだ。

 

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