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渡瀬訓太郎の多職種会議は、1週間前から予定されていた。多職種会議は、治療後の方針を検討したり、退院の準備をしたり、患者や家族との意見調整をするための場である。佳代は津島医師に自宅退院の希望を伝えていたが、受け入れられていなかった。

参加者は、本人、佳代、津島主担当医、野原指導医、水上担当看護師、金剛看護師長、村木薬剤師、菅井退院支援看護師、高松医療相談員、遠沼言語聴覚士、野際理学療法士、樋口地域ケアマネと大掛かりであった。

治療後、自宅退院するか転院するかの検討がテーマで、家族との意見調整が目的である。今回の進行は水上担当看護師であった。自己紹介から始まり、順番に報告していく。まず、津島主担当医からである。

「渡瀬さんは90才で、現役時代は電機メーカーの社員。コロナワクチンを接種した直後から急変し、診断はアナフィラキシーショックです。治療により全身状態は改善しましたが、ADL(日常生活動作)、認知力、嚥下機能、全身筋力などが低下しており、リハビリを依頼しています。ご本人は尊厳死協会の会員になっています」

「看護面では食事は単品食を練習程度でほとんど食べていません、尿も便も失禁でおむつの状態、会話は単語レベルで名前などは言えます。車椅子移乗は全介助です。穏やかな方でケアの後、いつも『ありがとう』と仰います」

「薬剤師としては特別な問題はありません」